水戸駅の北口から繋がる国道50号線を、黄門さん通りと言うそうだ。
徳川御三家の一つ水戸徳川家が輩出した水戸光圀はテレビドラマ「水戸黄門」でおなじみで、庶民に優しい穏やかな老人のイメージが強い。
一方でその実態は、徳川家一族でありながら明治維新のスピリットに影響を与えた水戸学の創始者であり、未開の地であった蝦夷に想いを馳せ、日本で最初のラーメンマニア等々数々のエピソードから想像するに、好奇心溢れるearly adoptiveでimaginativeな思索家だった。
ドラマにはそのような側面は全く織り込まれていないが、数十年に亘り史実から乖離した勧善懲悪の象徴してメディアに登場し続けたのは日本人がそういう人を求め続けてきた結果で、半沢直樹が熱狂を生んだ21世紀になっても変わらない。
そうしたパブリックイメージを末裔の方々や地元の人々がどう感じているのか知らないが、黄門さん通りには水戸黄門像もあちこちあるようだし、目抜き通りにその名を冠するというのは地元で愛されている表れでもあり誇りでもあるのだろう。
いきなり話が逸れたが、その黄門さん通りの南町一丁目の交差点奥に、水戸に寄ったら是非行ってみたいと思っていた店があった。
酒蔵瀬良美という居酒屋で、茨城の地魚や地酒を楽しめる老舗だ。
機会があって伺うことに。
靴を脱いで店にあがり、囲炉裏端に腰をおろす。
早速サーブされるお通しは美味で、中でも蓮のはさみ揚げは素晴らしかった。この店の名前がついた純米酒と一緒にいただく。また、つまみで注文した枝豆はさやの両端がカットされ仕事の丁寧さが伝わってきた。
刺身の四点盛りはタコ、ヒラメ、ほっき貝、トロサバ。どれも最高、日本酒は地元の渡舟。
そして、これが食べたかった、鮟肝ステーキ。フランベしたバターソースがまた旨い。日本酒は茨城の霧筑波。
この後、蛤の焼物やかつおの塩辛を挟んで、最後は金目鯛のあら煮。あら煮らしからぬ丁寧な仕上がり。日本酒は山桜桃。料理はどれを食べても美味しく、値段は良心的に感じられた。
ただ、日本酒の値段が明記されていないので、気にせず飲み続けると高くつくのかもしれない。
予約して18時に入店した際は自分たちしかいなかったが、20時前にお勘定をする時には満席。
地元でも人気のある店なのだろう。
住所:茨城県水戸市南町2-2-32