生まれて初めて自分で買ったレコードはYMOだった。
住んでいた学区域には電電公社の社宅があり、毎年親の転勤の都合で生徒が出入りする学校に通っていたのだが、小学校5年の時に越してきたYMOフリークにカセットを貰ってからハマった。
学校の最寄駅は小田急線の成城学園前、当時は北口に複数のレコード店があった。
そのうちの一つが成城学園前駅入口の交差点から成城学園の正門に向かう間にあり、時々学校帰りにみんなで立ち寄ったものだ。
Victor犬のNipperが店頭で佇むレコード店で、皆でワイワイガヤガヤ言いながらレコードを眺め、貯めた小遣いで買ったのがTechnopolis / Solid State Survivorのシングル版だった。
当時は透明な下敷きに雑誌の切り抜きを挟むのが流行っていたのだが、私はこのシングル版のレコードジャケットをしばらく入れていた記憶がある。
そんな小学生達が熱を入れる程に初期YMOは社会現象化していたが、このアルバムはその熱気から抜け出しつつある時期の作品を中心に構成されており、これまでのコンピレーションにはないユニークなものとなった。
1980年の暮れに発表された後期YMOの幕開けとも言える「HIRAKE KOKORO -Jiseiki-」、翌年3月のアルバムBGMの一曲目に収録された「Ballet」、その時期の前後を挟む形で発表された坂本龍一の「Riot in Lagos」と高橋幸宏の「Glass」を配置、それらを細野晴臣によるファンキーな「The Madman」が繋ぐ構成。
意外性と一貫性が絶妙にバランスするこの最初の5曲の流れは発明級の出来映えだ。
メロウな雰囲気の曲や超メジャー曲、最も売れたSolid State Survivorからの曲を採用しないcriteria、引き算的縛りもこのアルバムの雰囲気を際立たせ、特別なものにしているように思う。
また、カルトQのYMOカルトチャンピオン砂原良徳によるマスタリング、Towa TeiのソロやMETA FIVEのアルバムを手がける五木田智央のアートワークも素晴らしい。
五木田のアートワークは、Solid State Survivorのカバーアートを用いた鋤田正義のドキュメンタリー映画のflyerがベースになっているが、折りたたんでポケットに突っ込んでできた皺、モノクロコピーによる網点の風合い、五木田作品で多く見られる顔のない人物像等ユニークな作風は、この作品が従来のコンピレーションとは一線を画す象徴に相応しい。
そして、このコンピレーションを唯一無比のレベルに押し上げているのは、企画からcurationやsupervisingまで担ったTowa Teiの功績が大きく、まさに彼の面目躍如といったところだろう。
YMO40周年企画はこれに止まらず、全オリジナルアルバムのハイレゾ配信の順次サービスイン等、2018年11月以降もまだまだ続いていくという。