富ヶ谷交差点を山手通りの中目黒方面に緩やかな坂を上っていくと、赤い外壁が目を引くマンションがある。
この壁が非常にphotogenicで、雑誌やファッション写真の撮影場所として使われている状況に出くわすのは、この辺りの名物と言ってよいかも。
そしてもう一つこの辺りの名物だと思っているのが、一帯に漂う何ともいえない美味しいカレーの香りだ。
その源泉は山手茶屋という喫茶店で、赤いマンションの少し先にあるCous Cous Furnitureの手前を右に曲がったところにあり、風向きによっては山手通りの反対側までその香が届く日もある。
その香に惹きつけられ、昼時には近所に住む人達や近隣のオフィスで働く人たちがカレーを求め集う。
以前、Airbnbで近辺に宿泊している外国人家族がカレーを楽しむ場に遭遇したこともある。一人一人迷わず注文していたので、海外サイトでもメニューリスト付で紹介されているのかもしれない。
日式カレーは海外でも人気が出始めているし、外国人にとって寿司、天ぷら、お好み焼きに次ぐ日本食のネクストウェーブを担うような存在なのだろうか。
この店のカレーソースはチキン、キーマ、野菜の3種類ある。
私のおすすめはチキンで、ライスの量を半分にして、ソースだけ大盛りにして注文している(料金は通常の大盛り料金)。ここのカレーソースは小麦粉でとろみを付けないサラっとしたタイプだが、玉ねぎ等の野菜が溶け込んでおり所謂シャバシャバ的なものでもない。
この店独自のやり方で丁寧に煮込まれたカレーソースは、ありそうでなかなか無いようにも思う。
これが好きで何百回食べてきたことか。
人は食べたものでできているというが、私の体の数%は山手茶屋のチキンカレーでできていると言っても過言では無いと思う。
海外から帰国し、駅から家まで歩いて向かう途中で山手茶屋のカレーの香りが風に乗って鼻をくすぐると、
「あぁ、帰ってきたな」とほっとする瞬間が訪れる。
私にとって、家カレーレベルの親密さを感じる存在になっているのだ。
こうしたシンプルなカレーライスの他にも、ハンバーグや揚げ物をトッピングしたものや、焼きカレーやカレーうどんといった派生メニューも用意されているが、それらの中で私がチキンカレーの次に推したいのはカレーうどん。チキンカレーソースに出汁を加えたスープ、そこにコシのあるうどんが絡む。
深酒した翌日のブランチにベストマッチで、スープを全部飲み干せば胃がリセットされ、発汗で酒が抜け爽快な気分になれるだろう。
この店は駅から少し歩くため知らない人もいると思うが、是非足を運び食べてみてほしい。
住所:東京都渋谷区富ヶ谷2-6-14