資源利権、武器利権、国境拡大ドリブン型の政治手法、昨日の友は今日の敵となる諸行無常、これらが複雑に絡み合いリキッド化と硬直化を繰り返す国際関係。この末路がパキスタンとアフガニスタンの国境にある。
アメリカはかつて支援してきたビン・ラディンやタリバンと戦い続け、周辺国や関連国との間で様々な力学の変動を生み、戦争の長期化を招き、2001年から16年経った現在も現地からの完全撤退を果たせていない。
死の谷と呼ばれる6マイル程の小さな渓谷、コレンガルバレー(Korengal Valley)に設置されているアメリカ軍の前哨基地レストレポ(Restrepo)。
基地といっても、ベニヤや土嚢を使い山の中腹に無理矢理建てた粗末な建物で、水も食べ物もヘリによる配給を待たなければならない過酷な環境だ。
この一帯はタリバンの物資輸送ルートを含む重要エリアである一方、複雑な地形の山岳地帯であることから、思うように動きを掴めず、攻撃のリスクにも晒され続ける。
その場所で任務に就く米兵の日常、戦闘状態の様子を追い続けたドキュメンタリーがこの「レストレポ前哨基地 Part.2」だ。
映画で表現されるのは、複雑な国際関係ではなく、軍人達の日常と心象風景。
最前線基地で軍服を着続け寝起きする日々、極度の緊張からくる不安や恐怖、極度の非日常状態の中で感じる戦闘への渇望感だ。
現地で映像を撮影し続けた監督のSebastian JungerはTEDで、戦争を道徳的に捉えるのではなく神経学的に捉えるべき、戦闘前後は常に不安や恐怖と戦い続けるが、戦闘状態の中でのみ、そこから解放される、それは人間の本能であり大量のアドレナリンがそうさせる、その認識なく戦争を理解するのは難しいと言っていた。
また、皆が口を揃えて言うのは、自分を超えた仲間への愛、Brotherhood。
退役軍人はなかなか社会復帰できないケースがあるが、非日常の中で生まれる自己犠牲精神、集団内の相互意識、全てを超えた信頼関係や一体感、これらの欠落を平時の生活環境の中で埋めるのが極めて難しいということだ。
この映画を見ると良く分かる。
アメリカはこれからどこに向かうのか、アメリカ人はこれからどうに向かうのか、考えさせられる映画だった。