Salah Ragab & The CairoJazz Band / Egyptian Jazz (Art Yard 2006)

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1966年の冬にエジプトのカイロで行われたRandy Weston Sextet(Ray Copeland、Clifford Jordan、Bill Wood、Ed Blackwell、Chief Bey)のライブ後の打ち上げでたまたま同席したSalah Ragab、Hartmut Geerken、Eduard Vizvariが意気投合し、Salahのエジプト初のジャズバンド構想を実現しようと始まったのがこのアルバムだ。

Salah Ragabはエジプト軍隊音楽部の最高司令官を務め、3000人のミュージシャンを統率していた。

それまでマーチと国歌しか演奏したことのなかった軍の音楽部からメンバーをピックアップし、Trumpetが8人、Saxが5人、ベーシストやバンブーフルート、ドラマーやピアニストも抱え総勢20人のビッグバンドを編成した。

アラブ風の旋律とNYサルサのようなキレのあるリフを奏でるホーンセッションが印象的で、特にファンキーな曲ではHerbie Hancockの「Fat Albert Rotunda」あたりの雰囲気も醸し出しており、このバンドの要となっている。

多くのリハーサルを経て、60年代末から70年代初頭にかけ、Heliopolisで録音が進んだが、ラジオ局のスタジオでリハーサルしていた時のエピソードが面白い。

隣のスタジオから若き日のヨルダン国王フセイン一世が突然出てきて、曲にあわせて踊り出したという。

後にフセイン一世はヨルダン紙幣に肖像が印刷されるほど国民から人柄が慕われた国王だったが、ジャズ愛好家でもあったのだ。

このプロジェクトのブレーンの一人だったHartmut Geerkenは中東各地を渡り歩いていたドイツのアヴァンミュージシャンで、Sun Raとも親交があった。

Salah Ragabが後にSun Raのツアーに帯同し合同でアルバムを製作するキャリアを築き、Sun Ra関連作品の復刻を手がけるロンドンのレーベルArt Yard Recordsからこのアルバムも含め蔵出しリリースもできるようになった。

こうした一連の繋がりは、Hartmutが結んだ縁だったのかもしれない。

京都のレコードショップ「Meditations」がかつて紫竹にあった頃、初めて訪問した際に購入したアルバムで個人的にも思い出深い。

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