Chicagoは東海岸のN.Y.、西海岸のCaliforniaに次ぐ米国屈指の巨大都市。
かつては五大湖工業地帯の中心地として大いに栄えたが、現在ではRust Beltを象徴する街の一つだ。
禁酒法の時代からギャングが幅を利かせる南部の治安の悪さは伝統的だが、Rust Belt時代の今「Chiraq」と揶揄され、過去に例が無いほど治安が悪い。
「Chiraq」とはChicagoで発生する殺人件数がIraqやAfghanistanの米兵死亡者数を超えたことで生まれた造語で、Spike Leeも2015年に同名の映画を製作した。
一方でChicagoはBlues、JazzのBig Nameを数多く輩出しただけでなく、House Music発祥の地でもある。
音楽の世界では、オリジネーターの泉のような街なのだ。
最近のChicagoでは、先行きの見えない治安の悪さやガラの悪さをラップにのせるDrill Musicが新たなムーブメントを生んでいるが、それとは真逆のスタンスで、声を張り上げず、繊細なSoundで、Poetry ReadingのようにラップするNONAMEという女性アーティストがいる。
SoundCloudでアルバムを無料公開しているが、これだけのクオリティで無料というのはインターネット時代の賜物だ。
マネタイズの仕組みを工夫しているのだろう、モダンな知性も感じさせる。
ビートのズレ、Rei Harakamiが手がけたような不思議な音色が印象的なTrack Makingも面白いし、ヘビーなテーマをPoetry Readerのように軽やかに歌う様は、優雅ささえ感じさせる。
Drill Musicとは対極のModern Chicago Music、むしろ彼女のスタイルにこそオリジネーターとしての資質を感じる。
そのNONAMEが10月に来日決定。
久々に生で見て見たいアーティスト、来日が非常に楽しみだ。
