佐賀駅のバスターミナル7番のりばから古湯行きに乗車。
国道263号をしばらく北上して嘉瀬川をのぞむと、完全に市街から抜け渓谷までやってきたと体感する。
川上橋で下車し、與止日女神社、郵便局、オステオパシーの治療院の脇を歩くこと数分、通りから少し奥まったところに完全予約制のカレーのアキンボがある。古民家をリノベーションした居心地のよい空間に、厨房からスパイスをオイルで熱する音、鍋を炒める音、食材を切る音、それらと共に仄かにスパイスの香りがテーブルまで届く。窓の外から聞こえる雨の音と虫の音に耳を澄まし、出された白湯を飲みながら料理を待つ。
はじめは揚げた里芋をスパイスで和えた料理で、塩を下ごしらえされた玉ねぎと薄くスライスされたチーズと混ぜながら食べる。温かい食材とスパイス、玉ねぎ、チーズが一体となった良い香りがする。
カレーの1品目は、鶏レバーのカレー。複雑なスパイスと共に炒められたレバーは絶妙な柔らかさ、粘度。
トッピングされた紫蘇の千切りが不思議なアクセントになっている。
レバーの濃厚さをイチジクのフレッシュさでバランスをとりながら交互に食べ進める。
カレーの2品目は、イサキとリゾットのカレー。イサキの切り身のフライと、椎茸やスパイスとカボスの酸味が複雑にミックスされたリゾットを、フライをほぐして混ぜながらいただく。
これも美味しさとユニークさが両立している不思議な一皿。
ラスト、カレーの3品目は、羊の挽肉のカレー。東京時代からの鉄板メニューで、東京から予約を入れた私に、何らか東京に関するものをということで作っていただいたものだった。
温かいカレーとフレッシュなパクチーやドライハーブが混ざる時の香り、肉の柔らかさ、カレーの風味、それらのトータル感、まさに王道の一皿。
デザートはプリンとブラックコーヒー。このプリンの驚愕の濃厚さ。
生クリームではなくてクリームチーズで作っているのではないかと思える程ずっしりした感覚がスプーン越しに指まで伝わってくる。
実際に口に運んでみると限りなくスムースな舌触りでプリンのイメージがひっくり返る。
8時間かけて低温で蒸すことで中の空気が完全に抜け、脂質が分離するようなプロセスを経て、上半分はバターのような濃厚さ、下半分は通常のプリンのような質感に落ち着くそうだ。
この濃厚さがブラックコーヒーとよくあって、コーヒーのほろ苦さが口の中スッキリさせてくれる。
これらはコースになっており、3500円はリーズナブルに感じる。
市街地から距離があるが、行く価値のある店だ。