バクー油田を擁するカスピ海。
油田というキーワードからクリーンな印象を持っていなかったが、実際に海沿いのMilli Parkを散歩すると、思った程ひどくないと感じる。
そういえばペルシャ湾も案外青くてクリーンな海に見えたな。
油田はだいぶ沖の方にあるのだろう、水平線に何隻ものタンカーが見える。
Milli Parkを散歩する人はまばらで、その多くは旅行客に見えた。
少し話した高校生男子二人組も、アゼルバイジャンの他の地域から旅行で来たという。
日本から来たと話すと目を爛々とさせ、英語が全く通じなのに不思議と盛り上がり、一緒に写真を撮りたいというので快く応じた。
もしかしたら2人にとって初めて出会った日本人だったのかもしれない。
自分にとっても、高校生の自撮り棒で写真を一緒に撮るのは初めての経験だった。
国旗が掲揚されているエリアには大きなチェスが置いてあり、12月の冷たい海風が吹いているにも関わらず人々が興じている。
アゼルバイジャンは、15年間世界チャンピオンに君臨し続け、人類代表としてIBMのDeepBlueと対決したチェスの天才Garry Kimovich Kasparovを輩出した国ということもあって、このような遊具が設置されているのだろう。
隣国アルメニアは学校の授業にチェスが採用される程だし、コーカサス地方でチェスは文化なのだ。
一方でチェスとは元々、好戦的な王様に戦争をやめさせるために高僧が発案した擬似戦争ゲームだった。
ロシアとジョージアの南オセチア紛争、アルメニアとアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフ戦争、北コーカサスのチェチェン紛争など未だ解決しない問題を多く抱えるコーカサス。
かつては現実をチェスに封じ込んだが、現在はチェスに封じ込めたものがリアル化する時代なのか。
チェス的思考は何かを解決できるか、混乱させてしまうのか。
カスピ海を眺めながら考える。