30 years ago… from The Andy Walhol Diaries

Andy Warholは毎日秘書のPat Hackettに電話で前日の出来事を話し、それを彼女が文字に起こすことで日記を記録していった。

2016年の現在なら、iPhoneのSiriやディクテーションアプリを使うかもしれないが、人と話すことに意味がある場合もある。

ある時彼女がWarholに「精神科医に話してみようと思ったことはなかった?」と質問すると、Andyは「必要はない、僕には君がいる」と答えたという。

心理学では、リラックスした状態で親しい人と話すと孤独感、不安感、ストレスが軽減されると言われているが、Andyにとって彼女との日々の電話は心を安定させる儀式のようなものだったのだろう。

その日記の中で今から30年前の今日、Princeが登場する。

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この日記に登場するセレブやアーティストの多くは毒舌の対象となるのだが、Princeのことは珍しく絶賛。Parade Tour ニューヨーク公演初日とその夜のパーティの様子が記録されている。

若き日のジェームス・ブラウンを想起させるノンストップの完璧なショーなど、この日のライブは各メディアで絶賛されたが、Warholもこれまで見たライブで最高のものだったと語っている。

以下、「ウォーホル日記」パット・ハケット編 中原佑介/野中邦子訳 から抜粋。

1986年8月2日(土)
ウィルフレードがプリンスのチケットを手に入れたので、タクシーでマディソン・スクエア・ガーデンへ行った(3ドル)。会場でデビー・ハリーとスティーヴン・スプラウスに会った。僕らが席についたとたん、プリンスが裸でぴょんとあらわれた。殆ど裸に近いというべきかな。
あそこで見たコンサートのなかで最高だった。爆発的なエネルギーでエキサイティングだ。
ロン・デルスナーと会い、パラディアムでのプリンスのためのパーティに招待された。プリンスはコンサートが終わるやいなやリムジンで出ていった。マイク・トッド・ルームに入るとほとんどだれもいなくて、テーブルに予約席の札が置かれていた。そこに白い上着にピンクのベルボトムをはいた、ダンス・パーティのプエルトリコ人といった感じの男が一人ぽつんとすわっていた。
なんとそれがプリンスだった。本当に素晴らしいよ。
彼のイメージというと、わがままで、ボディーガードに囲まれていて、とっつきにくいという感じだけど、彼は一人一人に近づいて握手をし、ようこそと挨拶するんだ。その上女性とは一人残らずダンスをしたー60年代風のドレスを着たばかげた女性たちとだ。文字通り全員と踊ったんだよ。彼はそれほどダンスが上手くないのに。それに彼は人の名前をよく覚えているんだ。たとえば、「きてくれて嬉しいよ、ウィルフレード」という具合にね。素晴らしいマナーだよ!ウィルフレードはとびあがっていた。
プリンスに12月号の表紙に出てくれないかと頼んだら、マネージャーに話してくれという。それで、さっきマネージャーに訊いたら本人に話しをしてくれといわれたんだといった。すると、プリンスはマネージャーと相談するといっていた。ぼくらは身震いする思いだった。あまりにエキサイティングでね。
ビリー・アイドルがきていたが、この二人の若者の美しさを見ていたら、ああいう男の子がいまやハリウッドのグラマー・ガールの後継者なんだなと思えてくる。ハーロウとマリリンみたいなね。妙な気分だけどね。
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