Sinking Summerはマカオのマルチメディアアーティストで、YoutubeやBandcampでも幾つかの映像、音楽作品を確認できる。
2017年に発表されたこのアルバムは、shoegazeやpsyche感のあるゆったりしたギターサウンドが印象的だ。
東アジアの南側や東南アジアのインディーギターサウンドは、英国や米国のそれと少し違う気配がある。
南国の気だるい暑さとぬるい水に触れたような感覚、例えば夕方の海に素足をつけるような。
リリース元の4daz-le Recordsは2000年にマカオでスタートしたインディーレーベルで、Evade、Brunie、Mowaveなどエレクトロ、アンビエント系アーティストの作品を手掛け続けている。
EvadeのEPやMowaveの作品は連勝街のPinto Livros & Musicaで見かけたし、Brunieの作品は青山CiboneのCDコーナーで平置きされていた記憶があるし、EvadeのAlbumはシンガポールのレーベルからもリリースされており私も何年か前に購入した。
マカオの若い世代を中心に、徐々にシーンを形成しつつあることが伺える。
一方で、歴史を俯瞰すればポルトガルはこの地の遺伝子そのものと言える存在。
ポルトガル文化を引き継ぐような音楽も、あってもいいような気がする。
ポルトガル統治下にあったBrazil、Angola、Cabo Verdeではポルトガル歌謡Fadoの核となるsaudadeが継承されてきたし、ここマカオでもそういうものがあってもおかしくないかなと。
あるいは東アジア圏文化とポルトガル文化の融合、「マカエンセ」ならぬ「アジエンセ」のようなものもあってもいいのかなと。
例えれば、1970年代に広東語で歌われたCaetano Veloso、あるいは1980年代にポルトガル語で歌われた山下達郎のカバーなど。
そうした妄想上の産物に想いを馳せマカオでレコード探しに勤しんだが、これこそ「追い求めても叶わぬもの=saudade」そのものか、残念ながら出会うことは無かった。