小学生の頃、世田谷区のサッカースクールに6年間通った。
二子玉川の河川敷にある緑地運動場で毎週日曜、朝9時から昼前までみっちりと練習メニューをこなした。
年に数回ある大会の開催場所も同じで、都大会に出場する以外はずっと通い続けた思い出の場所だ。
成城学園前から二子玉川行きのバスに乗って吉沢という停留所で降り、コヤマドライビングスクール傍の近道を抜け土手に立つと、眼下一面に芝生や土のグランドが広がる。
野球場やサッカー場が何面もあるのだが、当時は子供も大人も同じコートを使っていたので本当に広く感じたものだ。
そんな二子玉川で、松茸鍋を鱈腹食べるという貴重な食事会に顔を出させてもらった。
大人になったなぁと、しみじみと感じならがら店に向かう。
花冠陽明庵は紹介制のサロンで、知らなければ通りすぎるような平凡なマンションの一室で最高の料理を味わうことができる。
主人の松本栄文氏は公家の家系を継ぐ料理人であると同時に作家、大学客員教授でもあり、様々な会やイベントの企画も数多く手がけられているようだ。
博識を独特の話術に乗せ料理を振る舞うスタイルはエンターテイナーそのもので、4時間飽きることなくあっという間に過ぎていった。
前菜の六皿はどれも素晴らしいが、特に印象的だったのは梨の白和え、ガンジーミルクチーズと蜂蜜漬け南高梅の2つ。前者はこの季節ならではの白和えでデザートとして出されても違和感のない一品。
後者はいつまででも食べていたい酒泥棒的な一品で、日本中で数えるほどしかいないガンジー牛のミルクだけで作った絶品チーズと梅とのマッチングが最高。思わず日本酒を注文すると、盃に菊の花びらを落として酒を注ぎ逆月を再現。このあと何品かを経たあとに、いよいよ松茸鍋だ。笹乃雪の豆腐と出汁だけが入った鍋に、水菜と大量の松茸を投入して煮ていく。
主役は飽く迄豆腐だそうで、このあとに投入する北海道の赤牛肩ロース600g(1人300g)!は飽く迄薬味だそう。薬味が多い方が冷奴だって美味しいでしょうと(笑)。すだちも山盛りだ。結局鍋では400gだけ食べて、生米から炊く雑炊に最後の200gを投入することに。
最後のほうは腹が苦しかったが何とか完食。
デザートのカスピ海ヨーグルトのイチゴソースも又絶品。イチゴソースは専用の建屋でかき氷用に作っているというが、火を使わないそう。
様々な意味で普通と違う面白い店だ。